3人のエキスパートに聞く「レーザー治療と不妊症」

あざなどの治療でよく知られるレーザー。不妊症治療にも使われるって知ってましたか?
レーザー治療への素朴な疑問から、不妊治療への可能性まで、3人の先生に伺ってみました。

鈴木秋悦 先生

鈴木秋悦 先生

慶應義塾大学医学部卒業、同大学院博士課程修了。米国カリフォルニア大学とペンシルバニア大学で生殖医学を研究、帰国後は不妊の研究と診療にあたる。元卵子学会会長。生殖バイオロジー東京シンポジウム代表、銀座ウィメンズクリニック名誉院長。

藤井俊史 先生

藤井俊史 先生

慶應義塾大学医学部卒業、同大学形成外科入局。医療法人社団慶光会大城クリニック副院長。日本レーザー医学会認定医。レーザーを使用した難治性不妊症の治療の分野で活躍中。



レーザー治療って、どんなものですか?

Q.そもそも、レーザーとはどういうものですか?
大城:レーザーはフィルターにかけて波長を選択し増幅した平行な人工の光です。地球に生物が誕生したのも、進化したのも光のおかげです。昔、まだ抗生物質のない時代のヨーロッパでは、結核患者は温暖で太陽光の豊富な地中海で療養する、つまり光治療が行われていました。レーザーは人工的に作られた太陽光のようなもので、太陽光と同じような光治療ができるのです。

不妊症の人にも使われる半導体レーザーの治療器。腰痛や肩こりなど、患部に当てますが、レーザー自体は痛みも熱さもありません。

Q.人体に安全なものなのでしょうか。
大城:強い光は強いエネルギーを持っているので、あまりに強い光を生物に当てると細胞がこわれるなど体に悪影響を及ぼすこともあります。しかし弱い光の刺激であれば副作用の心配もありません。たとえばおふろのお湯も適温なら気持ちいいし血行促進などの効果がありますが、熱すぎるとヤケドをしますよね。光も同じ。ただ同じ強さのレーザーを当てても人によって、また、当てる部位によって反応は異なります。安全なレーザー治療を受けるためには経験、知識が豊富で確かな技術を持った医師を選ぶべきです。
Q.レーザー治療というと、レーザーメスなど外科的なイメージがあるのですが、内科的な使い方もできるのでしょうか?
大城:強い光を当ててアザやホクロをとる治療が外科的なレーザー治療です。これはレーザーが特定の色のみに反応する性質を利用したものです。弱い光を当てる内科的なレーザー治療は新陳代謝の活性化、血行改善、鎮痛・消炎効果などの反応を利用して治療します。
鈴木:私はたくさんの不妊症の患者さんをみてきましたが、冷え性のかたは妊娠しにくいようです。内科的なレーザー治療で新陳代謝や血行改善ができるのであれば、冷えも解消しますよね。
藤井:そうですね。実際、レーザー治療を受けた不妊症の患者さんたちの多くが「冷えが解消した」と言いますね。
大城:即効性が期待できるのもレーザー治療のメリットです。治療後に妊娠したかたから「レーザーを当てたらすぐに子宮のあたりがポカポカとあたたまるのを実感しました。妊娠したとわかったとき、すぐにレーザーのせいだと思いました」と言われたこともありますよ。

レーザーで行う不妊治療って?

Q.不妊症のかたに、どんなふうにレーザー治療は効くのですか?
藤井:レーザーを当てると全身の血行が促進されますから、子宮や卵巣への血流がよくなります。また、自律神経のバランスがととのえられ、ホルモンの分泌や循環も円滑になります。

(右)治療前の全身のサーモグラフィー。体の中心の腹部の体温は32度前後と低い。(左)6回のレーザー照射で上半身はみるみるあたたまります。

鈴木:血行改善には漢方がいいといわれますが、レーザーでは漢方と同様の効果がより迅速に得られそうですね。
藤井:そうですね。当院に来院する患者さんはひどい冷え性や肩こり、頑固な便秘などに悩んでいるかたが多いのですが、レーザー治療を受けると、まずそうした体の不調が解消されたのを実感するとおっしゃいます。
Q.大城クリニックに不妊治療で来院する患者さんはどんなかたが多いのでしょう?
藤井:年齢でいうと平均40才前後のかたでしょうか。
鈴木:まさにいま不妊治療で問題となっている年齢のかたたちですね。
藤井:はい。そして不妊治療に関しては、専門のクリニックで体外受精など高度な生殖医療を一とおりやってきたけれど、残念ながら妊娠しなかったというかたたちがほとんどです。
大城:いわゆる難治性不妊といわれるかたたちですよね。
藤井:そういう難治性不妊症の患者さんでも、レーザー治療後は約20%が妊娠なさっているんです。
大城:内科的レーザー治療では光が脳や副腎皮質を直接刺激して、ホルモンや酵素系を活性化させ、体を本来の自然で健康的な状態に戻そうとするような働きも得られます。ですから、まだいろいろな難治性病変の治療に使える可能性がありますね。
鈴木:これまでの医学では薬物を使って病気を治すのが主流で、レーザー治療のようにホルモンや脳、自律神経に対するアプローチはなかったと思います。また、レーザーというと従来はアザや傷などの治療に使うというイメージが強かったのですが、今後は大城先生のおっしゃるように人間の体全体に働きかけ、体調をととのえるという面でも注目を集めていくのでしょうね。

不妊治療の壁は何ですか?

Q.不妊治療でいまいちばん問題になっているのは何でしょうか?
鈴木

第4回生殖バイオロジー東京シンポジウム(代表:鈴木秋悦先生)』(2005年7月24日)にて藤井先生が「低反応卵巣に対する低反応レベルレーザー治療」について発表されました。

:女性の社会進出や晩婚化に伴って、患者さんが高齢化していることでしょう。高齢化に対する効果的な治療法は残念ながらいまのところないのですが、たとえば若い年齢のときに未受精卵をバンキングすることなども、これからは考えるべきかもしれません。 高齢になると卵の質が悪くなってしまうんですね。高齢になると卵巣への血流が悪くなり、卵子の細胞質が変化して、細胞の中の機能が落ちてくるんです。つまり、子宮や卵巣への血流の悪さが問題なのですね。
大城:内科的なレーザー治療を行うと全身の血行が改善されるので、子宮や卵巣への血流もよくなると考えられますよ。
鈴木:それはレーザー治療の大きなメリットですね。以前「レーザーが当たることで、細胞が活性化され、ミトコンドリアがふえる」というお話を大城先生に伺いましたが……。
大城:はい。弱い内科的レーザー治療で細胞の中のミトコンドリアがふえることは、ソ連のティナ・カルーや米国のケンドリック・スミスなどが証明しています。
鈴木:レーザー治療によって卵子のミトコンドリアがふえるなど、生殖細胞でも同じことがいえますか?
藤井:レーザー治療前後の卵胞を比較すると、治療後は見違えるほど質がよくなっているそうですから、そういえると思います。
鈴木:なるほど。卵の質にとってミトコンドリアの活性は非常に大事で、ミトコンドリアがたくさんあることも質のよい卵子の条件なんです。しかし、いまのところミトコンドリアをふやすような薬はありません。高齢化による卵の老化という不妊治療の大きな課題にも、レーザー治療は可能性がありますね。

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