一人一人の体の特性を十分に見きわめ、
個々に適した体外受精を提案します
●体外受精専門のクリニックに転換
長い間、地域の分娩を数多く扱ってきた幸町産婦人科診療所。1992年より不妊外来をスタートさせましたが、2002年に雀部副院長が常勤となったことを機にお産をクローズし不妊治療をメインのクリニックにリニューアルしました。このころからさらにおおぜいの不妊治療の患者さんが詰めかけるようになり、ピーク時は初診の予約が3カ月待ちになるほど。
「近隣に不妊症専門のクリニックがあまりなかったこともあるのでしょうが、それだけ不妊で悩む患者さんが多いということですね」。しかし患者さんが多すぎて予約システムは破綻。とても一人ではみることができない状態になったため、副院長は一般不妊治療をやめ、体外受精専門のクリニックにしようと決意します。
「すべての不妊患者さんをみることがどうしてもムリならば、自分がいちばん得意とする体外受精に特化しようと考えたのです」。一人のドクターが誠意を持って、きめこまかな治療&ケアをしようと思ったら、おのずと限界があるといいます。
「体外受精を必要とする患者さんは、不妊患者全体の中ではそう多くありません。それと同時に、体外受精を得意とする医師もまた少ないのが現状です。高度な治療には、やはりそのスペシャリストが治療にあたるべき。これまで回り道をしていた患者さんに、自分の得意分野でこたえることができるようになり、体外受精に特化してよかったと思っています」
現在、幸町産婦人科診療所では一般不妊治療を希望される患者さんの初診はすべて断り、体外受精を希望される方のみ初診を受け付けているそう。治療を特化したおかげで待ち時間も改善し、一人の患者さんと話す時間もより長くとれるようになりました。初診の予約も1〜2週間でとれるほどに落ち着いてきたそうです。
●卵を扱う培養士と患者の交流も大事に
「体外受精を行う前に、必ず準備周期を1周期とるのがうちのクリニックの特徴です」。その準備周期の間に必要な検査をしたり、排卵誘発剤を試し飲みしてもらって卵胞の育ち方や卵巣のクセなどをみるのだとか。
「体外受精には、卵巣を刺激する方法などいろいろなやり方があります。クリニックによっては?うちの体外受精はこのやり方です?と画一的な治療をしているところもあるようですが、卵巣には一人一人クセがあり、子宮や卵などの状況も個人によって違います。ですから、1周期よく調べてから治療をスタートするのがよいと私は考えるのです」
体外受精に欠かせないのが確かな技術力を持ったエンブリオロジスト(培養士)の存在です。幸町産婦人科で採用しているエンブリオロジストは、全員、臨床検査技師の資格を持っているかたのみです。
「エンブリオロジストは培養室にこもりっぱなしではなく、患者さんとじかに顔を合わせることが大事」と雀部副院長は言います。「この卵一つにどれだけの思いが込められているかを感じることで、『○○さんの赤ちゃんになる卵』と意識しながら卵を扱い、自然に心のこもった仕事ができる」という考えから、同クリニックでは、体外受精の説明会やコーディネート、結果の説明を担当したり、診察室で医師と同席するなど、エンブリオロジストが患者さんと接する機会をふやしているそうです。
同クリニックのエンブリオロジストのチーフである雀部崇代さんに聞いてみると、「臨床検査技師は医療スタッフ。そんな私たちが卵や精子をとり扱うことで、医学知識をベースに体外受精全体を評価することができますから、医師は患者さんの状況をより正確に把握することができるのです。受精卵は言ってみれば極小未熟児のようなもの。ヒトの命を預かる医療現場で働いているということは常に意識しています」と話します。
さらに「受精卵診断」が雀部副院長の研究テーマで、米国留学中にはそのトップレベルの知識や技術を学び、大学在籍中は、積極的にその研究を積み重ねてきました。「もともと、生殖医療には遺伝の問題がつきもので、治療の過程で遺伝の相談を受けることが多いのです」と話す副院長は、生殖医療指導医と臨床遺伝専門医、2つの資格を保持した日本でも数少ない生殖遺伝学のエキスパート。遺伝子診断を併用した不妊治療や生殖遺伝相談にも対応できます。