その人に合った処方がたいせつ。
選択肢の一つとして、漢方治療もぜひ試して
●医師がオーダーメイドの漢方薬を処方
千歳烏山内科・漢方クリニックは昨年の12月に開院した、現代医学(西洋医学)と伝統医学・漢方の両方を使って診察してくれるクリニックです。
「これまでも大学病院などで漢方を使った治療は行っていましたが、より自在に漢方治療を行うため開業しました。従来の漢方治療は医師が患者さんをみて処方箋を書き、薬は薬剤師さんが出すスタイルで、使うのは大手の薬メーカーが作るエキス剤でした。でも私はエキス剤だけでなく、そのかたに合った調合の煎じ薬を自分の手元から出したいと思ったのです」と入江先生。
エキス剤と、木の根や葉などから作られる生薬を調合した煎じ薬の違いをわかりやすく説明すると、レディーメイドとオーダーメイドの差で、煎じ薬のほうがしっかりと効くのだそうです。では不妊でこちらのクリニックに相談に行った場合、具体的にどんな治療が行われるのでしょう?
「あらかじめくわしく書き込んでいただいた問診票をもとに時間をかけて問診を行い、漢方的な診断をします。このプロセスは、不妊症でもそれ以外の病気やトラブルでも、基本的には同じです。なぜなら漢方治療は、”病気はそのかたの体が本来持っている自然治癒力を最大限に引き出し、体を正常な状態に戻す”ことが目的だからなのです」
内科医であり、漢方医でもある入江先生には、婦人科で行われる不妊治療は”特殊なもの”に見えるそう。たとえば「卵管が狭窄していたら卵管を開く」といったように、ピンポイントで部分的に行う治療は体に不自然ではないか、かえって体に負担をかけることがあるのではないか、と言います。
「もちろん、西洋医学的な治療を否定するわけではありません。しかし、困った『問題』は子宮や卵巣にあらわれているけれど、それは全身に問題があるからではないか、ととらえるのが漢方の考え方なのです。外科的な手術でしかきちんと治らない病気であれば、それはそういった治療を受けるほうがいいに決まっています。簡単な手術で治る病気まで漢方で……というのは本末転倒。ですから、西洋医学的な治療を受けてもなかなかよくならない場合に、それなら漢方で……というのが正しい順番なのでしょう。そのバランスを見誤ると、見落としてしまうトラブルもあると思います」
●婦人科とじょうずに組み合わせて利用を
「これまでみた不妊の患者さんの中には、いきなり『漢方で』と言ってくるかたはいませんでしたが、不妊症かなとお悩みになったら、まず婦人科を受診して必要な検査や治療を受けることが前提ですね」。これは男性の場合も同様。「精子の数や運動率などはこちらでは調べられませんので。実は私自身がみた患者さんの数は少ないのですが、漢方治療は男性不妊によく効くような印象を持っています。動物実験でもかなりよい結果が出ていますし、私がみた患者さんの中でも、漢方薬を2週間飲んだら精子の運動率が5倍以上も上がり、それまでできなかった自然妊娠をされたかたがいました。もちろん漢方薬の効果が出るまでの時間には個人差がありますが」
入江先生がいちばん困るのは、「私はどの漢方薬を飲めばいいですか」という電話での質問。漢方は一人一人の患者さんと会い、顔や表情、体つきなどを見て、それまでの生活など、トラブルに至る背景の話を聞き、総合的に診断、処方するもの。現在悩んでいる症状だけを説明されても、その人に合った漢方治療はできないのです。
「いまはみんな早急に答えを出したがりますが、最低半年から1年ぐらい、腰をすえ、じっくりとり組む覚悟が必要でしょう。それは漢方治療でも西洋医学的な治療でも同じ。また、漢方治療では食事や生活習慣なども見直さなければいけませんから、他人まかせではなく、自分が本当に治していこうという強い気持ちでとり組むことが大事です。体のトラブルは生活のゆがみ、それまでの誤った生活習慣の積み重ねで生まれたもの。そういうところから真剣に治さないと、自然に妊娠するのはむずかしいのではないでしょうか」